会議も終わり、暫くはドイツの仕事を手伝った。日本へ行くと言いつつ、それが叶ったのは年が明けて一週間以上経ってからだった。
 日本の自宅周辺は古い家屋が多い。昔ながらの風景の合間を縫ってゆっくりと日本の家へ向かった。冬の冷たい空気が身体を包む。冬という季節にいい印象はあまりない。やはり母国の寒さが厳しいからだろうか。葉を纏わない木々の先の細い枝が風によって微かに揺れた。その光景をぼんやりと眺めながら寂寞が胸を包む。そうして辿り着いた日本の自宅は背の低い広くゆったりとした日本家屋そのものだ。石の敷かれた玄関までの道程を殊更ゆっくりと歩く。その横を赤と白の早咲きの椿が彩っていた。丁寧に手入れされているのだろう。美しく咲き誇る赤と白の花弁を横目に、引き戸の横に取り付けられたインターホンをそっと押した。
 この行動をするとき、プロイセンは少しだけ何か期待に似た高まりを感じる。日本へ行くとき、プロイセンはとくに連絡をしない。というか、どこに行くのも予め連絡したりすることはなかった。約束事があれば別だが、日本へ行こうと思うのはいつも唐突だ。今回は行くと予め宣言していたが、日にちや時刻などはまるで伝えていなかった。それはいつものことなので、大した荷物も持たずこうして日本の家の玄関前にいる。少し間抜けな呼び鈴の音が鳴れば、いつもパタパタと駆ける足音が聞こえて日本が出迎えてくれる。いつだってそうだった。プロイセンが来るのはいつも突然だし、日本が家を留守にしていて待ちぼうけすることもある。そんなときですら、日本は「来ていたのですか? 待たせてしまってすみません」と申し訳なさげに言ってくる。いつだっていらっしゃいと快く歓迎されている気がするのだ。受け入れられている。それが胸の奥をきゅっと突いてくるのだ。
 しかし、今回はインターホンに答える声は聞こえなかった。もう一度鳴らしても、しん、としている。そりゃそうか。労働時間がおかしい日本はいつだって仕事仕事だ。変わってねえなあ、と思わず笑う。日本がプロイセンを師事していた頃も休むということを知らないやつだった。直すべきところなのに変わっていないことを嬉しいだなんて思ってしまうのだから、どうしようもない。
 留守宅の前でさてどうするか、と思ったとき背後に感じた気配に振り返る。

「これはまた、えらい美しい色の外人さんで」

 そこにいた人物は男性であった。年齢は六十代…いや七十代だろうか。東洋人の年齢は見た目からはよくわからない。気配からして一般人だ。日本の都道府県の化身ではない。

「ええっと…本田さんはいらっしゃらないようですね。来客がいるとは思っておりませんで。その…言葉は通じているのかな…」

 男はプロイセンの見た目に困惑しているようだ。プロイセンは慌てて「日本語はわかる」と伝えると男は驚いたような顔をした。流暢に発された日本語に驚いたあと、緩やかに微笑んだ。似てるな、とぼんやり思う。柔らかなそれは日本の微笑によく似ていた。

「もしやドイツ人でいらっしゃいますか?」
「ああ。俺はドイツ人だが」
「やっぱり! 本田さんはよくドイツに行っているみたいですしねえ。あちらでお知り合いに?」
「え…?」

 日本がよくドイツに行っている? 仕事だろうか。いや、そんなに頻繁に行き来するものではないだろう。ドイツで仕事があれば、仲の良い弟とその友人は日本を誘ってドイツ宅に泊まらせることが多い。プロイセンもドイツの家に住んでいるわけだから日本がドイツ宅に来ればそれなりに出迎える。しかし、仲良し三人組が行うお泊り会なるものをドイツ宅で開催する頻度は多くない。男のよくドイツに行っている発言は何かの間違いではないか、とプロイセンは眉を寄せた。
 その表情を勘違いしたのか、男は慌てて頭を下げた。

「ああ、すみません。挨拶もなしにべらべらと。私は佐藤といいます。本田さんとは趣味仲間というか…」
「趣味? …ってあっちのか?」

 フランスもハマったらしいあの趣味だろうか。この男もそういうのが好きなのか、と外見からの判断で勝手に意外だなと思いつつ問うと男は首を傾げた。

「あっち、とはどういうことだかわかりませんが、私は昔教員をやっておりまして。恥ずかしながら、歴史学者として本なども出版していましてね。本田さんは歴史に詳しいでしょう? 本田さんとはよく歴史談義をする仲なのです」

 へえ、と反射的に相槌を打ちながらプロイセンは苦笑した。歴史に詳しい、とは当然である。日本はこの国そのものだ。言わば歴史の生き証人である。目の前の男がそれを知らないで日本と歴史談義をしていると思うと少し面白い。

「俺はギルベルトだ。にほ……本田とは何て言うかその…友人?だな」

 日本との関係はこれと断言できるものがないような気がして言葉に詰まったが、佐藤と名乗った男はそうですかと微笑んでプロイセンの差し出した手に自分のそれを重ねて握手に応えた。

「本田さんはお仕事ですかね。これ、持ってきたのですが…」

 そう言って男は片手に持っていた紙袋を持ち上げた。その袋に記されたロゴには見覚えがある。

「それ饅頭か」

 日本がよくプロイセンに振る舞ってくれる饅頭だ。

「ええ。私は妻も子もいない独り身なもので、本田さんはよく夕食に招待してくださってね。本田さんも独身でしょう? こうして茶飲み友達としてもよくして頂いているのです。あなたも本田さんをお待ちなのでしたら私の家に来ませんか? 我が家は近所ですから、お待ちしている間よろしければこれ振る舞いますよ」

 男は人の好さそうな微笑みをプロイセンに向けている。そこに他意はなさそうだが、日本人にしては積極的だ。確かにここで待ちぼうけするより、男の家で待っていたほうがいい。男は独り身だと言っていたし、話し相手でも欲しいのかもしれない。プロイセンは頷いて男の後についていった。



 男が自宅の玄関の鍵を開ける。その様子を後ろで見ながら、プロイセンは目を見開いた。
 男が手にした鍵にはストラップがついている。黒い紐の先につけられた飾りはプロイセン国旗であった。え…、と戸惑っているうちに男は「どうぞ、お入りください」と言ってどんどん先に進んでいってしまう。慌ててその背を追って男の自宅にお邪魔した。

「おお…!」

 プロイセンは男の家に入り、思わず感嘆の声を挙げた。それに男がクスクスと笑みを零す。

「ギルベルトさんは本がお好きですか?」

 男の家は本がたくさんあった。埋め尽くされていると言っていいほどの量だ。恐らくは書庫室もあるのだろうが、そこに収めるだけでは事足りなかったのだろう。居間にまで本が積まれている。

「ああ、本はよく読むぜ」
「よければお貸しいたしますよ。日本語が読めるので?」
「おう。俺様にかかれば日本語くらい余裕で取得できるぜ!」
「それはすごいですねえ」

 思わずテンション高めに答えてしまったが、男は感心したように目を見開いた。やはり、と思う。この男は日本に似ている。そりゃあ日本人なのだから日本国の化身に似ていてもおかしくはないのだが、雰囲気がそっくりなのだ。
 プロイセンは並べられた本の背表紙を眺めていたが、あるところでその視線を止めた。思わずその本を手にする。

「憲法に興味がおありですか?」

 お茶を用意していた男が炬燵の天板に湯呑を置きながら、プロイセンの手にした本を見てそう言った。手にした本は『大日本帝國憲法』と題された書籍だ。その本が置かれた段はどれも憲法に関連する本ばかりがあった。それも明治憲法の、だ。

「歴史学者と言っていたがこの時代が専門か?」
「いえ。私はずっと西洋史をやってました。昔はドイツ史を専門としておりました」

 男がす、と目を細めてプロイセンをじっと見つめた。その強い視線に戸惑うが男は一瞬で柔らかなもとの表情に戻って微笑む。

「そこいらの本は本田さんが薦めてくださったものなのです」
「…本田が?」
「はい。いつの日か、本田さんに尋ねたのです。タイムスリップするならいつの時代に行きたいか、と。そうしたらね、あの方、明治初期がいいと言うのです」
「明治…」
「ええ。動乱の時代です。これからの日本の行く先が決まる大事な時代です。何故かと問うたら、あの方は茶目っ気に笑いました」

 くす、と男が何かを思い出したように笑う。

「『憲法学者にでもなりたいですねえ』だなんておっしゃっておりましたよ。伊藤公の滞欧憲法調査についていき、グナイストやモッセに会って…ふふ、そうそう。シュタイン詣でに行きたいと喜々として語っておりました。まったく変わったお方でございます」
「……本田がそんなこと言ってたのか?」
「ええ。彼は明治憲法が好きだとおっしゃっておりましたよ。おかしいでしょう? 今でこそいろんな見方をされますが、昔は明治憲法なんてまるで諸悪の根源というかのように論じられたものです。軍国主義を歩み出した日本の最初の一歩、その象徴として。今の…現代の日本が忘れてしまいたい過去そのものであったのでしょう」

 男は目を伏せたが、すぐにプロイセンを真っ直ぐに見つめて言う。

「けれど本田さんは、あれこそ誇るべきものであると言うのです」
「…誇るべきもの」
「はい。〝constitution〟。日本語では憲法と訳されます。ドイツ語では、」
「Verfassung」
「ふふ、はい、そうですよね。日本語の訳され方だと少しニュアンスが違います。〝憲法〟では狭義的な意味になってしまう」

 へえ、と無意識に相槌を打つ。

「本田さんはね、〝constitution〟の訳としてある言葉が気に入っているとおっしゃっておりました。ある日本の有名な小説家がこう訳しているのです」

 静かだった。男の声以外、何ひとつ物音がしていないかのような。それはプロイセンが息を殺して男の言葉に耳を傾けていたからだ。

「〝国のかたち〟」

 ドクン、と一際大きく鼓動が鳴る。
 息が止まってしまったかのような一瞬だった。いや、それが一瞬だったのか、それとも長く続いた時間だったのかわからない。時が止まったかのような錯覚に陥った。
 国のかたち。その言葉はいやに深く心の奥底に突き刺さった。それは、この俺たち化身の身体を形作るものである。
 これだけ話を続けていたのに男は今更、「どうぞ」と湯呑をプロイセンに近づけた。そこで初めて気付いた。喉がからからに渇いていることに。男の言葉を聞き逃さないようにと気を張っていたことに。
 プロイセンは三口ほど一気にお茶を飲んだ。熱いはずの緑茶はするりと喉を通り抜ける。は、と短く息を吐いて男を見ると、にこりと微笑まれた。

「西洋諸国に何の力も及ばない当時の日本が縋ったものは万国公法でした。今でいう国際法ですね。それがあれば大丈夫だと楽観視していたとも言います。西洋諸国は不平等を解消するには万国公法に沿えと言った。しかし、それがあっても小国が守られるものではないと語った方がおります。そうしてようやっと日本の使節団は思い知った。自国の弱さと世界の厳しさを。それを知ったのは、かの鉄血宰相と言われたビスマルクの言葉からです」
「大国は利があれば公法を守るが不利とみれば公法に代わって武力を用いる、ってやつか」
「よくご存じで」

 当たり前だ。よく知っている。俺はその場にいたのだから。どうしてか、今まで思い出したこともないようなことなのに、それでも鮮明にあのときの情景が瞼の裏に浮かんだ。
 日本の使節団はどこか覇気を失っていた。巡った国々でそう簡単に生きていける世界ではないと思い知ったのだろう。そこに同随していた日本の姿を思い出す。その瞳はクリスマスツリーを見て輝かせたいつかの煌めきは一切なかった。何の感情さえ浮かばないような顔で彼は立っていた。着慣れない洋装に身を包み、不似合な佇まいで、その黒曜は何の色も浮かべてはいなかった。
 ビスマルクは言った。我がプロイセンの望みは国権を重んじ、各国が互いに自主独立し、対等の外交で、決して侵略しあうことなく存在しあうことである、と。軍備を増強したことを周辺諸国に非難されるけれど、それは決して他国の国権を侵そうとしているわけではない。英仏のように他国に侵攻し、植民地を築いているのとはわけが違う、と。
 それを聞いて日本の瞳が色を取り戻したように感じた。見開いた目をどこか切なそうに細めてから、首相の後ろで控えるプロイセンに視線を向けた。その縋るような眼差しはプロイセンを強く射抜いた。そこに滲んだはっきりとした信頼にプロイセンは苦い思いでいた。馬鹿だろう、と言ってやりたかった。そんなに容易く信頼を向けるな、と。それと同時に胸中に抱いたのは仄かな喜びだった。あんなにも強い信頼と憧憬の眼差しを向けられたことはかつてなかったから。
 我がゲルマンこそが最も親交を結ぶのにふさわしい国である。そう高唱した首相に日本は顔を輝かせたのだった。

「それから、万国公法は西洋諸国に文明国と認められた国にしか適用されなかった。それに縋っていた日本はどんなにショックだったでしょう。足元が崩れていくような不安に苛まれたことでしょうね。そんな日本が縋った最後の砦が憲法です。それがあれば、文明国として…近代の〝国家〟として、認められるはずのもの。まさしく、これから〝日本〟として生き残るための〝国のかたち〟を得ようと必死だったのでしょうねえ」

 だからね、と男はプロイセンが天板の上に置いた本を引き寄せてその表紙を緩やかに撫でた。

「これは誇りなのだと、本田さんはおっしゃっておりました。これのおかげでようやっと道が開かれたのだと。先の見えない真っ暗な船旅にようやく見えた灯台のようなものなのだと。これはね…日本の精神、そのものであったと」

 法は民族精神の発露だと、そう言ったのは誰だったか。憲法は法文ではなく、国家の精神であり、能力である、と。

「〝噫憲法よ汝已に生れたり〟」

 芝居がかったような声音で男は言って、プロイセンににっこりと微笑む。

「そんなことが当時の新聞記事には書かれたそうですよ。どれほどの喜びだったのでしょうね。それにですね…ふふ。知ってます? 本田さんのお誕生日、二月十一日なんですって。日本の建国記念の日です。この日に明治憲法は公布されました。それがね、誕生日プレゼントのようなものだと、本田さんはそんなおかしなことを言っておりました。毎年毎年、思いを馳せるようですよ。国のかたちを得たあの時代に」

 プロイセンは何も言えずにいた。
 知らなかった。日本がそんなことを思っていたなんて、何も知らなかった。

「そんな話をね、本田さんとはしているのです。ふふ、それはもう何度も何度もね。もう結構な長い付き合いなのですけれど、何度もね、このお話を語られるのですよ。〝国のかたち〟を得るために教わったあらゆることのお話を幾度もされるのです。プロイセンという国に師事した、日本のことをね」
「……プロイセンに」

 男は天板に無雑作に置いた鍵を撫でで目尻の皺を深くした。
 ちゃり、と音が鳴る。男が鍵を手にして眼前にかざした。ストラップがゆらりと揺れる。その先についているのは、プロイセン国旗であった。

「ええ。私はこの国に魅入られて、この道に進みました」

 プロイセンが瞠目するのを意に介さず、男は楽しげに笑う。

「本田さんはまるで恋でもしているかのような表情で、頬を微かに朱に染めて、かの国について語られるのです。このストラップは本田さんがくださったのです。手作りだと言っておりました」

 プロイセンは絶句するしかない。わけのわからない大きすぎる感情が渦巻いて、どうすればいいのかわからない。男の言葉は確かにプロイセンの耳に届いているというのに、その内容を理解するのにはだいぶ時間がかかった。

「こういうものを作るくらい好きなんでしょうねえ、本田さんは」

 「すき…?」と鸚鵡返しするしかないプロイセンに、男はひどく優しげな表情で言った。

「はい。プロイセンが、ですよ」

 半ばパニック状態のプロイセンをしり目に、男は「お饅頭、食べないのですか?」とそんな呑気なことを言う。今は饅頭などどうでもいい。ずず、とお茶を啜る音が聞こえる。す、と目前に置かれた饅頭。「お好きなのでしょう?」と問うたその言葉に何で知ってんだよと思った矢先、プロイセンはハッとした。
 おかしい。男の語ったあまりの内容に気を取られていて気づかなかった。男は言った。本田とは結構な長い付き合いだと。あり得ない、そんなこと。長い付き合いと言うならば、ここ一、二年のことではないということだ。本田菊という男が老いることもなく、ずっと同じ姿でいることに気付かないはずがないのだ。それに男はどう見ても容姿からは年下であろう本田に随分と丁寧な言葉を使ってはいなかったか。

「おまえ…」

 プロイセンが不審げな目を向けても男は全く動じない。男は炬燵から出て少し下がった。次の瞬間にプロイセンはぎょっとした。男がと深々と頭を下げたからだ。混乱していると、男の静かな声が凛と響いた。

「あなた様にお会いできて恐悦至極に存じます。Herr. Preusen」

 息を呑む。顔を挙げた男の表情がいつかの日本と重なった。

 ――『あなたから学べたことを嬉しく思います、師匠』

 忘れていた。あの日のことなんて、すっかり忘れていた。
 日本が帰国する日。あいつはあの夜色の瞳を煌めかせて俺を見た。陰謀と策略が渦巻く世界で、国と国が心からの信頼など持てないはずなのに、あいつは俺への信頼を一度も陰らせたことなどなかった。甘い考えは捨てろ、と何度も言ったのに純粋な憧憬を湛えた瞳で俺を見る。馬鹿だと思った。甘っちょろくて簡単に人を信用する、そんな奴が生き残れると思わなかった。けれど、あのあと日本はどうなったか。いとも容易く世界の中心に潜り込んでいったではないか。あの姿は、好意を滲ませ、信頼と憧憬を含んだあの瞳は、もしかして――…。
 この間の世界会議でのフランスとの会話を思い出す。日本はよく表情を変えるだろうと俺は言った。フランスはお前の勘違いじゃないのと返した。フランスは知らないのだという。あいつがどこか幸せそうに、嬉しそうにはにかむ、その様を。もしかしてそれは。
(俺だけに、向けられていた…?)

「おまえは…」
「見ての通り、ただの老いぼれでございます。先も長くはないでしょう。往生する前にどうしても貴方に伝えたいことがあったのです」
「俺に?」
「同じ感情を抱いてほしいとかそういうのじゃないんです。気にかけてほしいとも思っておりません」
「……?」
「ただね…知っておいてほしい。ただ、それだけなのです」
「なにを…」
「我が祖国の胸懐を」

 男は目を細めて、昔を思い出すような表情で静かに口を開いた。

「私が本田さんに…いえ。祖国様にお会いしたのは、もう四十年ほど前のことです」

 どこか覚悟を決めたような声音に、プロイセンは普段よりだいぶ早く刻む鼓動をどうにか静めて耳を傾けた。