それに気づいたのは最近のことだった。
 ドイツで行われる世界会議に補佐として参加するために会場入りした。準備のために弟と共に一番乗りすると、暫くして参加国が各々集まってくる。最初に来たのは日本だった。プロイセンが参加したことのある会議で彼が遅刻したのを見たことは一度としてなかった。
 日本は部屋に入ってこちらに気づくと、「プロイセンくん、ドイツさん、おはようございます」と近づいてきていつも通りの挨拶をした。
 これだ、とふいに思う。日本は緩やかに微笑んで挨拶を済ませば世間話をするでもなく、すぐに自分の席に座った。その背を茫と見つめがら、最近気付いたことを反芻していた。日本はプロイセンへの反応がそれ以外の国々とは違うのだ。
 例えば。

「あれ、ぷーちゃん?」
「よお」
「珍しいね」
「まぁな」
 フランスの反応である。

「あー! ぷーちゃん、おるやん!」
「おう」
「終わったら?みに行こな?」
 スペインの反応である。

「ドイツー! おはよー! ハグハグ~」
 勢いよくドイツに抱き着いたイタリアがプロイセンに気付く。
「あれー? プロイセンだ」
「おーイタリアちゃん! 今日も可愛いぜー!」
 さあ来い! とばかりに両手を広げたプロイセンを無視して、イタリアはドイツに抱き着いたまま話しかけている。これがいつもと変わらないイタリアの反応である。
 ヴェストにハグするなら、俺様にもしてほしいものだ。イタリアちゃん、俺様ちょっと寂しいぜ…。羨望の色の強い眼差しを受けて、弟が憐憫を含んだような瞳でちらとこちらを見た。これも普段通りの反応だった。

 プロイセンが会議に参加したときの反応は日本とその他で分かれる。日本以外は大体同じ反応だ。プロイセンが参加することは珍しいため、目を丸くしてお前もいるのか、珍しいな、と声をかけてくることが多い。
 けれど、日本は違う。会議室にプロイセンがいてもこれっぽっちも表情を変えることなく、ただ挨拶をして席に向かう。ドイツに聞いたことがある。日本は普段も会議に来たらあんな感じなのか、と。ドイツはプロイセンの質問に怪訝そうにしながらも、いつもと変わらないと答えた。
 いつもと変わらない。
 それがどんなに貴重なことか、俺はずっと気づいていなかった。
 日本とは今は深く関わりがあるわけではない。それこそ昔は一応師弟という関係であったし、盟友だったときもある。それからはずっと会うこともなく、東ドイツとして日本と国交を結んだときに久方ぶりにその顔を見た。正直に言ってもう関わりはない。関係を示せと言われれば、弟の友人といった感じか。

 あるとき、恩でも売ってやろうと掃除をしに行ったことがある。その少し後のことだ。日本がイタリアと共にドイツ宅に遊びに来たときに彼は言った。
「プロイセンくん。また掃除を手伝っていただけますか?」
 そんなことを言われるとは思っていなかったため驚くと、日本は困ったように笑いながら「年寄りには少々きつい所がありまして…」などと言っていた。饅頭くれんなら行ってやるよ、なんて答えれば、日本はそれは嬉しそうに破顔したのだ。俺様に掃除してもらうのがそんなに嬉しいかよ、とその小さい頭をわしゃわしゃ撫でれば、「プロイセンくんがいてくれて助かります」と小さい声で返事が返ってきた。その声が微かに震えている気がして、不思議に思いつつ顔を覗くとそっと背けられて、その顔を見ることは叶わなかった。

 それからは日本に時々行くようになった。どうしてか、日本の傍は心地良いのだ。



 会議はいつものごとく踊る。だが、高校生のようなおふざけの合間だろうと一応会議は進められていた。
 今は日本が矢面に立たされていた。この何十年、何度も繰り返された非難を日本は表情を変えることなく、聞いていた。怒ることも悔しがることもせず、ただ真っ直ぐ背筋を伸ばして受け入れている。
 あいつはあんな顔をしていただろうか。能面みたいな顔だ。精巧な機械人形のような。昔はそうではなかった。師弟という間柄だった頃、日本の表情はころころと変わった。好奇心で満ちた輝く瞳。己の弱さを嘆いて睫毛を震わせた。悔しさを堪えるように唇を噛んだ。師匠、と滑らかに紡がれる低音が優しく響いた。こちらを見て小さくはにかんだ。
 変わったと思わなくはない。
(いや、違うか…)
 表情の変化が見受けられないのは今が公の場だからだろう。あいつは今でもよく表情を変える。プロイセンくん、と呼びかけてはにかむ。瞳を緩ませ、唇を撓ませ、笑う。そんなところは変わっていない。
 いつだってそうだった。拗ねた顔も困った顔も知っている。もっとも、プロイセンが日本と過ごす時間は少ないが。ドイツのもとを訪ねた日本と顔を合わせるのが大体だ。掃除を手伝ってほしい、と言われてからは日本宅にも訪ねるようにはなったけれど。



 休憩に入った会議はその議題の一つもまとまることはなかった。深い皺を眉間に刻む弟に苦笑する。手元の資料を整えていると、近くで「あー無理か」と諦めたような声が聞こえた。視線を向ければ、席を立とうとした中途半端な体勢のフランスが苦く笑っている。視線に気付いたフランスが困ったような顔であれ、と顎をくいっと向けて指示したそこにはアメリカと日本がいた。

「日本に借りてた漫画返すついでに、オタ話で盛り上がろうとか思ったんだけどさ」

 アメリカの手振り身振りの激しい言葉に困ったような笑みを浮かべつつ頷く日本を見て、プロイセンも苦笑した。半ばアメリカに連行されていくような形で会議室を出ていく二人の姿を眺めながら、あー…と残念そうな声をあげるフランスはよっぽど日本と話したかったらしい。恐らくは、プロイセンには理解できない趣味とやらの熱い感情を日本と共有して発散したかったのだろう。

「日本も大変だねえ」

 と他人事のように(実際そうだろうが)言って、フランスは少しだけその菫色の瞳を揺らした。

「なんだよ」

 その表情の真意を問うと、フランスはきょとんとしてから緩く首を振った。

「いやさあ、日本てあんまり表情変えないでしょ? そりゃ趣味とかでびっくりするくらい目の色変えたりはするけど。微笑とかはよく浮かべるけど、いつもの笑みって感じで心から笑うのとかあんまり見たことないなーってふと思ったわけよ。そういう性格だっていうのはわかってるんだけどさ。疲れないのかなって思って。最近ずっと顔色悪いし」

 まあ、日本の労働時間とか冗談としか思えないしね、とフランスは軽く言った。
 プロイセンはフランスの言葉に眉を寄せて首を傾げる。

「あいつ、よくころころ表情変えてるだろ?」
「え…そう?」
「ああ。よく嬉しそうにはにかんでんじゃねえか」
「ええ?」

 フランスは思い出すようにうーんと唸っているが、結局思い至らなかったようで「おまえの勘違いじゃない?」とまで言ってきた。聞き捨てならねえ。俺様の目がおかしいとでもいうのか。

「てめえが人のことちゃんと見てねーだけだろ」
「えーなにそれ。俺、日本と結構仲良しなんだよ? 少なくともお前よりよく会ってると思うんだけど」

 それはそうだろう。プロイセンは自分の考えが間違っているのかと眉を寄せた。いや、そんな見間違えなどするものか。日本はよく笑う。あの夜色の瞳をきらきらと煌めかせ、まるい頬を緩めてはにかむ。たとえるなら、あの表情は──そうだ。幸せだと心から発しているような、そんな顔で。
 能天気な奴、と思ったことがある。甘っちょろくて簡単に他人に信頼を捧ぐ。八方美人と言うほど要領はよくない気がするが、誰彼構わず仲良し小好しが通常運転だ。打算なしに信用を振り撒いているようにも見える。そうだとしたら、よっぽどの馬鹿だ。どんな生き方してくれば、あんな平和ボケ全開の爺さんになるんだか。
 プロイセンは未だ唸っているフランスに「お前の目がおかしいんだろ」と見下すような視線を向けた。フランスは方眉をあげて、なにそれひどいと突っかかってきた。

「てか、何でお前とあいつの表情について話さなきゃなんねーんだよ。どうでもいいだろ」
「ええ、お前ひどい! 友人の心配してるだけじゃない。仮にもかつての弟子だったっていうのにぷーちゃん冷たいわ」
「昔の話だろ」

 そうだ、昔の話だ。もう百年以上前のこと。日本ももう何とも思ってないだろう。長く続く歴史のほんの一瞬の交わりだ。プロイセンとて、あの日々は歴史の中の一ページとして思い出となっている。
 もしかしたら。日本はもしかしたら、忘れたいと思っているのかもしれない。そんなことをふいに思った。日本が非難を向けられる時代。その一歩を踏み出したあの日々は輝かしいものでは決してない。誇れるものでもないだろう。先程の会議の様子が脳裏に浮かぶ。表情を変えることなく、日本はただ粛々と浴びせられる言葉を聞いていた。その顔が絶望に染まることはなかったけれど、目を逸らしたい過去であるに違いない。あるいは、消し去ってしまいたい過去だろう。
 東ドイツとして彼に再会したとき、日本は変わってなどいなかった。あの黒曜を星空のように煌めかせ、お久しぶりですと笑った。もしかしたら、その奥に絶望を隠していたのかもしれない。けれど俺はその変わらない微笑みに安堵した。変わっていく世界で取り残されていくだけの俺は、どんなに小さなことでも変わらないことがあることにほっとしたのだ。



 会議の休憩時間ももうじき終わりを迎える頃、さっさと昼食を済ましたプロイセンは自動販売機がコーヒーを作り終えるのをぼんやり待っていた。
 誰もいない休憩スペースに安堵の息を漏らす。会議場という場所は居心地が悪い。その理由を理解していて、わからない振りをした。プロイセンは昏く嗤うと、出来上がったコーヒーのカップを取り一口含んだ。喉を通る苦味までもが、おまえの居場所はここにはないのだと主張しているような錯覚に陥って首を振る。らしくない。おざなりに取り付けられたような椅子に腰かけて深く息を吐いた。プロイセンをひとり取り残していくだけの世界は、無慈悲にも昏い影をプロイセンの心に落としていく。

「プロイセンくん」

 静かに、そっとかけられた声。一瞬反応が遅れたが振り返ると日本が立っていた。日本、と咄嗟に呟くと、ふわりと笑った。ほら、とこの場にいないフランスに胸中で呼びかける。こいつは笑うじゃねえか、と。こんなにも嬉しそうにはにかむじゃないか、と。
 日本がじっとプロイセンを見つめてくる。目を合わすのは苦手だと言っていたはずなのに、と遠い昔のことを思い出した。もうそれは克服したのだろうか。そう思うと、つきりと小さく胸を刺すような痛みが走る。時代の変化を思ってプロイセンは切なく笑った。

「よう、日本。どうした?」

 日本はプロイセンと少し距離を開けてちょこんと椅子に腰かける。ちょうどよかった、と言って手にした鞄から何かを取り出した。

「あなたに見せようかと思いまして」

 日本は楽しげに、まるで子どもが何か悪戯でも仕掛けるような顔でふふ、と笑った。これ、とプロイセンに見せたものは紙の装飾品だ。今にも破けてしまいそうな古いもの。そんなどうだと言わんばかりの自慢気な顔で見せるにはあまりにも稚拙なそれは。

「覚えていますか?」
「…それ、クリスマスツリーの飾りか」

 日本はプロイセンの言葉に子どものような無邪気さを湛えて嬉しそうに笑った。

「ええ、そうです。実は昔のものを整理していたら出てきたんですよ。懐かしくなってしまって、つい持ってきてしまいました」
「よくそんな昔のもん残ってんな」
「物持ちはいいほうなので」

 そういう問題かよ、とプロイセンは微苦笑する。
 ひどく懐かしい。あんなにも樅の木の探し求めて駆けずり回ったのは後にも先にもあのときだけだった。

「あーすげえ懐かしいぜ。お前に盆栽渡されたこととか」
「だってどんなものか全くわからなかったんですよ」

 拗ねたような顔で言う日本の頬をつんつんと突いてケセセセと笑う。日本は頬を突く指を振り払うこともせず、プロイセンの楽しげな笑い声につられたように微笑んだ。

「天にまで届くかのようなクリスマスツリーは圧巻でした。ふふ、そうでした。提灯も並べてみたりして。今では我が国でも当然のようにクリスマスを祝うようになりましたよ。毎年毎年街中がイルミネーションで飾り立てられて…それを見るたびに思い出すのです」

 日本が目を伏せた。瞳と同じ色の睫毛が覆う。ああこいつ意外と睫毛長いんだな、とそこを見つめながらぼんやり思った。伏せられた目がプロイセンに向けられる。

「あなたに…」

 細められた瞳が撓む。

「あなたにね、頂いたあの日のイルミネーションを」
「イルミネーション?」
「きっとあれが我が国で初めてのイルミネーションでしたから」

 綺麗でしたねえ、とあの遠い昔の日を思い出すような表情をする日本に何故だかざわざわと胸中が騒めいた。綺麗、か。心からそう思っているように、どこかうっとりとして日本は微笑む。
 綺麗と言うならば今のイルミネーションのほうがよっぽど綺麗だろうに。あり合わせで飾り立てたあのクリスマスツリーなんかより、よっぽど。けれど日本は、数え切れないほどの光源で飾り立てられた美しいイルミネーションを見るたびに思い出すのだという。あの遠い昔の日の些細な出来事を。
 プロイセンの胸中にじわりと何かが広がっていく。切なさのような、喜びのような、何とも言えない感情が揺れていた。
 そうか、と絞り出したような声で応えた。思わず、微笑んでいる日本の髪を梳くように撫でる。たまにする掻き回すような撫で方ではないそれに、日本は少し戸惑ったようだが抵抗することはなかった。

「そういやもうすぐクリスマスだな」
「そうですね。少し早いですが言っておきますね」
「あ?」
「ふろぇーリッヒェ・ばいなハテン!」

 プロイセンはきょとんとしたあと、盛大に吹き出した。

「ぶっは! おま、ひでえ発音!」
「なっ…失礼ですね!」
「なに言ってんのかわかんねえレベルだぞ、おまえ」
「仕方ないでしょう。日本語はあなた方のような変な舌の動きはしません」
「変なってなんだよ、変なって。つーか、お前そこんとこ全く変わってねえな! しゅてるネンヒンメルぅとか、きるちゅぶるうてぇとか言ってた頃まんまじゃねえか」
「なっ…んでそんなこと覚えてるんですか!」
「ふふん、俺様の記憶力なめんな。俺様は天才だからな! お前が目ぐるぐる回して動揺しまくってた顔もはっきり覚えてるぜ!」
「そんなことまでですか…」
「おう! もうさすがに発音は慣れたと思ってたけどよ。まったく成長してないとかどういうことだ、このやろう」

 おりゃ、と乱暴に髪を掻き回す。ぐらぐら揺れる頭に日本は拗ねたような顔をしていたが、そこに喜色が滲んだような気がしてプロイセンは首を傾げた。まるで嬉しいことを隠すかのように堪えているみたいな表情だ。しかし、微かに緩んだ頬は日本の感情を隠しきれてはいなかった。

「発音はどうしてもうまくなりません。まだあなたが必要なようです。ご教授願えますか? 師匠」

 プロイセンは目を丸くして日本をまじまじと見た。師匠、と呼ばれたのはいつぶりだろうか。日本は何てことのないように、ただ緩やかに微笑んでいる。けれどその黒曜はどこか縋るような色を秘めていた。

「…仕方ねえな。俺様の授業料は高いからな」
「饅頭ですか?」
「おい。俺様の偉大な教鞭の価値が饅頭とはどういうことだ」
「いりませんか? たくさんご用意しますよ」
「…特別だからな!」
「ふふ、嬉しいです」
「取り敢えず、さっきの発音はダメすぎる! Frohliche Weihnachten!、な」
「ふ、フロェーりっふぇ……う、舌を噛みそうです」
「こら。泣き言いうんじゃねえ」
「謎の舌の動き…」
「日本語のほうが謎だらけだろ。つか、英語ではちゃんと言えんだろ?」
「め、メリーくりすます!」
「…嘘だろ」
「……その信じられないような目で見るのやめてください」
「ドイツ語はともかく英語ですらそれっておまえ…」
「いいんです。そのうち、身に着けても見えないくらい小さい機械を通してどんな言語でも同時通訳してすらすら話し合える世界になるんです」
「その機械、おまえが作る気だろ」
「頑張ります」
「頑張るとこそこじゃねえよ。ったく、おまえは…」

 呆れの視線を向けたプロイセンとむすっと眉を寄せた日本は互いの顔を見合わせて、思わず吹き出すように笑声をあげた。

「特訓が必要だな」
「…お手柔らかにお願いします」
「取り敢えず手始めにこれ捨ててこい」
「え」

 プロイセンは飲み終えたコーヒーのカップを日本に渡す。

「それただのパシリ…」
「返事は?」
「Ja!」

 低い声で催促すると、日本は反射的に背筋を伸ばしていい返事をした。その昔と何も変わらない仕草にプロイセンは笑う。戯れのようなやり取りに日本もつられて微笑んだ。まるで昔に戻ったような感覚で、プロイセンは日本の髪を撫で回した。
 そろそろ時間ですね、と呟いた日本に頷く。

「ではよろしくお願いしますね、師匠」

 立ち上がった日本がそう言った。プロイセンは瞠目して、何と答えればよいのかわからず無言を返す。
 ご教授願いますか、と日本は確かに言った。プロイセンも教えてやると返した。けれどそんなもの、この場限りの戯れのやり取りだと思っていた。そもそも英語ならともかく、ドイツ語がそんなに役立つものとも思えない。
 日本は何も返さないプロイセンを気にかけることもなく、会議室へ向かうためにプロイセンに背を向けた。

「にほん、」

 プロイセンは絞り出すように名を呼んだ。

「はい?」
「近いうちにお前んち行くわ」

 振り返った日本はプロイセンの言葉を聞いて破顔した。「ええ、ぜひ」と言ったその表情は、とても嬉しそうで。
 プロイセンは会議室へ戻っていく日本の小さい背中を見ながら、湧き上がる衝動を抑えようと必死だった。
 そうだ。彼はいつだってそうだった。プロイセンが珍しく会議に参加しようと、いつもと変わらず接する。プロイセンがそこにいることがさも当たり前かのようにおはようございますと挨拶をするのだ。そして、必ずドイツの名より先にプロイセンの名を呼ぶ。プロイセンくん、と呼ぶその声はいつだって柔らかく紡がれた。そうしてじっとプロイセンをその黒曜に映してから、ゆっくりとドイツへと視線をずらしてドイツの名も呼ぶ。それから二人を見て挨拶をして席につく。いつだってそうだった。
 彼はプロイセンの存在を当たり前のように扱う。そこにいて当然だと行動で示していた。
 ああそうか、とようやく気付く。彼の傍が心地良いと感じるのはそういう理由だったのか。