ソルカイ小話 『hound』
続きより、ソルカイ小話です。
hound
「おかえり、レオ――って、ひどい顔だな」
「……ああ」
火照った頬に据わった眼。獣にでも睨みつけられているような心地でカイは眉を下げた。
「楽しいパーティーじゃなかったのか」
「お前は奸佞邪知にまみれた懇親会を楽しいと思えるのか」
カイは肩を竦めてみせ、かけていた眼鏡を外した。
「そのまま部屋に戻って休めばよかっただろう。報告なら明日聞くぞ」
「ああ。これだけは渡しておこうと思っただけだ。明朝には発つ」
デスクの前までのそりと歩いてきたレオが資料を放り投げる。レオが動いたことで彼の纏ったアルコールの匂いが鼻に届いた。
「え? 聞いていた日程と違う」
「ちょっと気になることがあってな」
「ふぅん? 重大か?」
「バンビーノの手を借りるほどじゃない」
ぱら、と資料を捲っていたカイの手が止まる。胡乱げに上目でレオを見れば、酒気で据わった目とかち合う。
立っていても身長差があるが、座った状態で見上げるとかなり遠い。昔、ちびと揶揄われて、絶対に君より大きくなる! と息巻いていた自分を思い出して羞恥と共に居たたまれなくなった。
バンビーノと呼ばれたことでいらぬ思い出まで想起してしまった。
「……酔ってるな、レオ」
「次から次へと注がれて殴るとこだった」
「我慢したんだ? 偉いじゃないか」
「そうだろ。俺がスーパー偉いことをようやく認めたか」
カイは微苦笑して適当に相槌を打った。どうせ、この会話も明日には綺麗さっぱり忘れているだろう。……たぶん。
「とにかく、何かあったらすぐに連絡してくれ」
「ああ」
頷きデスクに手をついたレオが、ハァと深い溜め息を吐く。相当、嫌なパーティーだったらしい。
明日発つというレオには何か好みそうな手土産でも――と考えたところで、ひく、と自分の身体が跳ねた。首を傾げてレオを見上げる。疲労の溜まった双眸が不思議そうにカイを見下ろした。
何だったんだろう、と不審がりつつ、思い出したように呼吸をしたときだった。鼻孔に届いた匂いにハッとする。
知っている。わずかに近づいたレオの身体から見知った香りがした。
そのあとは無意識だった。気がついたときには腰をあげ、レオの襟首を掴んで引き寄せていた。
「なッ……!?」
驚きの声はカイの耳には聞こえていない。
デスクを挟んで巨体を引っ張った所為で慌てて手をついて体勢を保ったレオの襟元へ顔を近づける。すん、と鼻を鳴らして、カイは無意識のうちにごくんと唾を呑み込んでいた。やはりこの匂いを知っている。もっと、とさらに嗅ごうとしたカイの頭は首の筋を違えるんじゃないかという勢いで離された。
「何なんだ、急に!?」
眼前で顔を真っ赤にして喚くレオに首を傾げる。何をそんなに怒ってるんだろう。
ぼんやりした頭で朧々とした瞳を瞬かせる。やけに頭が重い。ドクンドクン、と鼓動を刻む心臓の音がなぜか大きく聞こえる。
「おまっ……なんつー顔してる」
「え……?」
「ね、熱でもあんのか?」
長い前髪をよけ、ぺたっと額にくっついたレオの大きい手のひらがいやに冷たく感じた。
ねつ…? そんな予兆はなかったはずだけど。それより。
カイは鼻から深く空気を吸い込んだ。
「におい」
「は?」
「この匂い知ってる」
ぽかん、と口を開けたレオは、急に脈絡のない言動をし始めたカイを怪訝に思いながらも鼻を鳴らした。微かにだがアルコールに混じって届いた香りが何だったかを思い出してげんなりする。
「やけに絡んできた貴族がヘビースモーカーな上に他人にも勧めてきてな。染みついてしまったらしい。そんなに臭うか?」
腕を鼻に持っていき、嗅いでみると確かに煙草の匂いはした。だが、そこまで強く香るわけではない。言われなければ張本人のレオとて気づかないほどだった。
「この臭いがどうかしたのか?」
「この煙草の銘柄知ってる」
「銘柄ァ? お前は煙草は吸わんだろ」
「ああ。ソルが吸ってるたばこの匂いだ」
「…………………」
レオは思わず押し黙った。
カイの一連の謎の行動に得心がいく。そして、得心がいってしまった自分を嘆いた。
眼前には先まで仕事に向き合っていた怜悧な表情が嘘のように、ぽやんとした顔の同僚がいる。レオの手が薄い肩を押しやったままなのは、細い腕がいまだにレオを引き寄せようとしているからだ。この匂いを嗅ぐためだろう。もっともっと、と求めてくる男はもう王の顔など欠片もしていなかった。
抜けるように白い頬が薄桃に染まり、宝玉のような蒼碧は露のベールを纏っている。薄く開かれた小ぶりな唇が、呼吸するたびにやたらと熱い呼気を放っていた。
コンコン、と扉打の音が鳴ってびくりとレオの身体が揺れる。反射的にだろう、カイが返事をしたことで「失礼します」と部下が入ってきた。
レオは咄嗟の判断で眼前の蜂蜜色の頭をぐっと自分の胸もとへ引き寄せた。
「うぐっ、」
あまりの力加減のなさにレオの逞しい胸筋に埋まったカイが呻く。
「カイ様、先程頼まれていた件ですが――」
カイの呻き声に反応した部下が手にしていた資料から顔をあげてぎょっとした。
「っ、れ、レオ様、」
「カイは少し体調が悪いみたいでな、休ませるところだ。急ぎの用件か?」
「い、いえ……しかし、その……」
デスクを挟んでいるが、親愛する王たちが抱き合っている。性格にはレオがカイの頭を胸に引き寄せているだけなのだが、もがいていたカイの手もちょうどレオの身体に縋るように絡みついているために、どう見ても抱き合っているようにしか見えない。
レオは百面相をしたあと顔面蒼白になって固まってしまったカイの部下を一睨した。刹那、息を呑んだ部下が「失礼しましたッ!」と慌てて執務室を出ていく。
どんな誤解を生んだかわからないが――わかりたくもないが――、少なくとも今のカイの顔を見られるよりマシなはずだ。
「っいい、加減、はなせ……!」
「うおっ」
ぐいっと押しやられて一歩引くと、ようやく厚い胸筋から解放されたカイがレオを睨みつける。
「何をするんだ、レオ!」
「……お前の体裁を守ってやった俺に感謝しろよ」
「はぁ?」
意味がわからないと眉を寄せるカイの顔はまだ健全な王様に戻っていなかった。もとより疲れていたというのに、余計に疲労が蓄積している気がしてならない。レオを深い溜め息を吐いた。
〝それ〟を知ってしまったのは、レオにとっては完全な事故だった。品行方正を通り越して融通が利かないと思っていた男に情夫がいるなんて思わなかったし、知りたくもなった。だが、レオは見てしまったのだ。それも二回も。聖騎士団本部の中庭で一回、イリュリア城の廊下の曲がり角で一回。一度だけなら角度のせいでそう見えただけだとか、単なる事故だろうとか、そう納得してもよかった。しかし二回となると間違いだとは思うことはさすがに無理だった。
眼裏には鮮明に蘇る。細い腕が太い首に絡みつき、常にない気安さで自然に重なる二つの影が。
「……カイ。今、自分がどんな顔してるかわかるか」
「は…? さっきから意味がわからない」
レオは再度溜め息を吐き、懐から小さい手鏡を取り出してカイに突きつけた。怪訝に眉を寄せながら自分の顔と向き合ったカイの蒼碧が徐々に見開かれていく。もとより上気していた頬がぶわあっと瞬く間に真っ赤になった。
「なっ、な……なに、なんで……ッ」
カイはかなり混乱しているらしい。そりゃそうだ。鏡に映る自分の顔は、誰が見てもわかるほど欲情しているからだ。
なんでなんで、とパニックに陥るカイの顔が百面相を繰り広げるのをレオは呆れた目で見やった。
「ソルの匂い」
「――ッ!」
答えを突きつけてやると、小さい唇はぱくぱくと金魚のように開閉する。
「な、な、何で! レオ、知って……!?」
「知られたくないなら廊下でキスなんかするな」
「ッ……!」
同僚の前で欲情した――それもたかが煙草の匂いで――うえに、とんでもない秘密がばれていたと追い打ちをかけられてカイは撃沈したらしい。涙目になって戦慄いている。
昔からいけ好かないほどに冷静な顔がぼろぼろに崩れていることにわずかに愉悦を感じながら、レオはさらに意地悪く口角をあげた。
「ご無沙汰か?」
「っ……!」
図星らしい。確かに、あの仏頂面の軍神様は釣った魚には餌をやらなそうだ。
理知的に状況を俯瞰する誰よりも軍人然としていた元聖騎士団団長をこうまで翻弄できるのは、あの男くらいだろう。
見たこともないほど動揺しているカイの姿に疲れが多少薄れた気がする。こんな姿、おそらくはあの男しか見たこともないのだろうし。
愉しんでいたのがばれたのか、カイはデスクを通り越し、レオの襟にぐいと掴みかかり睥睨した。喧嘩でもする気かという行為だが、羞恥を通り越して混乱が極まっているらしい。
「……レオ。その顔やめろ」
「どんな顔だ?」
頬が勝手に緩む。しばらく直りそうにない。カイはむっと唇を尖らせてその美貌に怒りを露わにした。
レオはふいに思い至り、細腰をわずかに引き寄せた。動いたうえに近づいたことで、レオに染みついてしまった煙草の香りが微かに漂う。途端に、かくんっとカイの身体が力を失った。それを難なく受け止めながら、にやにやと腕の中の男を見下ろすと林檎のような頬で見上げてくる。目いっぱい睥睨しているつもりだろうが、潤みきった蒼碧に恐怖など湧くはずもなかった。
ベッドの中ではこんな顔をしてるのか、とぼんやり考えていたレオも真面な思考が働いていない自身に気づいていなかった。アルコールを摂取し過ぎて頭が重い。
互いに朧々とした頭でぼんやり顔をつき合わせていたときだった。ノックもなく執務室の扉が開く。開いたと同時にレオはギアと対峙してような凄気を感じた。……あながち間違っていなかったが。
「何してやがる」
レオは咄嗟にカイを突き飛ばした。常なら軽い身のこなしで何ともないはずのカイは突き飛ばされたままにぺたんと床に座り込んでしまう。座り込んだまま、話の渦中だった男の登場にぼんやり顔をあげたカイの表情は先までより酷くなっていた。いやらしさ、という意味で。
部屋の入り口でカイを見下ろしたソルが片眉をあげる。薬でも盛られたのかと思うようなカイの顔を見て静かな怒気を浮かべた。
「さっき、テメェの部下に妙な話を聞いたぜ? 何でも今まさに浮気が行われようとしているとか」
「はぁっ!?」
「俺に報告に来たわけだが」
「報告!?」
「ただのあいつの早とちりだろうと思ってたが、マジだったとはな」
ソルの言葉にいちいち驚いていたのはカイだ。レオはむしろ沈黙しか返せなかった。なぜなら、先ほど訪れたカイの部下が顔面蒼白になった理由が見当違いだったことに気づいてしまったからだ。彼は第一連王と第二連王のスキャンダルを目撃してしまったから慄いたのではない。カイとソルの仲を知っていて、その後の展開に戦々恐々としていたのだ。まさか、ソルが外堀まで埋めていたとは……。他にも二人の仲を知っている者がこの城にはいるのかもしれない。
レオは慄然とした。釣った魚に餌をやらないなどと、そんな軽易なことではなかった。この男はすべて計画的に動いている。それこそ、じわじわとカイ=キスクという男を侵略しているのだ。きっと、骨の髄までしゃぶり尽くすように。
考えればわかることだ。あのカイが、くそ真面目で融通の利かない、品行方正を絵に描いたようなあのカイが、間違っていることを極端に嫌うカイが、王という立場で、しかも妻子ある立場で、ソルと懇意になるはずがない。過去懇ろだったとしても、恋人が出来た時点で、妻を得た時点で、王になった時点で、関係を解消するはずだ。それをせず、ソルとの関係をさも当たり前かのようにカイが受け入れているのは、ソルに誑かされたからに違いない。じわじわと、それを普通だと思うようにソルがカイに仕込んだのだ。
だからあの反応ですら、きっと。
「誤解だ、ソル」
レオは引き攣りそうな頬をどうにか平静に保ってソルを振り返った。
「どこかの誰かさんは煙草の匂いに反応したらしい」
「煙草?」
「ベルを鳴らして餌を与え続けたんだろ」
珍しくソルがわずかに目を見開き、瞬いた。
「犬を実験にしたのか躾けたつもりなのか知らないが、少しやり過ぎじゃないのか」
レオはさっさと扉に向かった。もうこの場にいるのは耐えられない。
すれ違い際にソルが口角をあげたのを見た。悪魔も真っ青な卑しい笑みだ。ぞっとしない。
「ああ。覚えのいい賢い犬だが、たまには昔のように牙を立てられたくもなる」
「……惚気るなら俺以外にしてくれ」
レオは深い溜め息を吐き、扉に手をかけた。
「待ッ、まて、レオ! 私を一人にするな!」
状況すべてを理解はしていないのだろうが、ソルと二人きりになってどうなるかだけはわかっているらしい。カイが慌ててレオを呼び止める。
レオは今度こそ盛大に顔を引き攣らせた。浮気を疑われたあとにその言い草は火に油だとなぜわからないのか。
「〝賢い犬〟……と言ったか?」
呆れかえった顔でソルを見やれば、彼も似たような顔をしていた。
「ああ、あいつは俺の前ではいつも愚かだ」
また惚気か、とレオは嘆息し、今度こそ部屋を後にした。
*
さすがにヤり過ぎた。
ソルは怠い身体をのそりと起こした。執務室でしたあと、カイの自室で盛り上がり過ぎたおかげで身体が重い。主にカイの所為だが。ご無沙汰だったところにパブロフの犬よろしく精神反射で盛大にたぶっていた。勿論美味しくいただいたわけだが、おかげで非常に疲れた。
脱ぎ散らかしたジャケットを引き寄せ、ポケットを気怠くあさって煙草を取り出す。何度も意図的に繰り返したおかげで、今やもう何も考えていなくてもベッドの中では勝手に煙草に手が伸びる。最中にもふかした所為で灰皿は吸い殻でいっぱいだった。
ソルがシガレットを咥え、ぼんやり日の高い窓の外を見ていたときだった。せっかく火を点けた煙草が背後から伸びてきた白い手の中に消えた。ジュ、と嫌な音と共に皮膚が焼けた臭いがして瞠目する。
「おい」
何のつもりだ、と手のひらで握って火を消すという暴挙に出た男を振り返ると、色濃い情事の痕を残した裸身を晒した男は俯いていた。長い金糸が垂れて、その表情は窺えない。
「……を……な」
「あ?」
「っ、私の前で二度と煙草を吸うな!」
勢い良く上がった顔にソルはわずかに目を見開いた。澄んだ青空のような瞳は潤んで揺れ、抜けるように白い肌はほんのりと赤く色づいている。情事の名残やら羞恥やら怒りやら、いろんなものを綯い交ぜにした表情での一睨は、うっかりソルの熱の呼び起こした。枯れ尽くすほどしたというのに欲望というものは限りがない。
ソルの吐いた深い呆れの溜め息を自分へのものと勘違いしたカイがさらに柳眉を吊り上げる。
「お前の所為だ! その煙草の匂いで、ッ、私は……っ!」
昨日の同僚の前での失態を思い出したのだろう。手の中の煙草を忌々しそうに睨みつけている。火に焼ける痛みより怒りが勝っているらしい。痛みなど感じない素振りで、カイは再度煙草を握りつぶした。
カイはまだぎゃんぎゃんとお前の所為だと喚き散らしている。確かにその通りだが、カイの言葉とソルのそれの意味は決して一致しない。カイはソルを非難してはいるが、どちらかというとソル自身というよりソルの煙草好きという嗜好、さらにそれに反応してしまうようになってしまった自分への怒りのほうが大きい。
馬鹿だ馬鹿だと思ってたが、ここまで阿呆だとは。やはり息子はこの男に似てしまったのだろう。そうだ。そうに違いない。ソルは多分に責任転嫁をし、カイの握り締めた拳を開かせた。白く艶めいた手のひらの中央に小さい火傷の痕があることに舌打ちしながら、火の消えたシガレットを奪う。
「……まだ気づかねぇのか」
「え?」
くるりと指の間で煙草を回し、カイを見据えた。
「わざとに決まってんだろ」
「……はぁっ!?」
大体、いくら長年この嗜好品と付き合ってきたにしても、事の最中にまで吸おうだなんて思わない。煙草以上の嗜好品が目の前にあるというのに、濡事の手を止めてまでわざわざ火を点けるものか。
大方カイは行為の最中にソルが煙草をふかすのは、自分との色事がソルにとっては没頭するほどのものでもないからだと勝手に思っていたに違いない。いつも煙草を手を伸ばすと、カイはわずかに切なげに眉を下げる。だからといってわざわざ説明して彼に安堵を与えないのも打算のうちだった。人は手に入らないから望むし、追いつかないから追いかけるのだ。
――少しやり過ぎじゃないのか。
レオの言う通りかもしれない。決して従順ではないが物覚えのいい犬には効果が強すぎたらしい。また昨夜のようにソルではない他人の纏った香りで欲情されても困る。しっかりと足腰立たなくなるほどの仕置きは済ませたが。
ソルは再度火をつけ、ふうっと深く紫煙を吐き出した。止める間もない強行に動けなかったカイの顔に思い切り煙がかかる。びく、と身体を跳ねさせたカイの双眸に膜が張った。もじ、と動いた細い腿に笑いながら似つかわしくないほど熱っぽく囁く。
「どこの馬の骨ともわからない奴に奪われちゃ堪んねぇからな」
「ッ……」
「マーキングだ」
引き寄せ、耳もとで呼気を吹き込むように呟くと、腕の中の身体が燃えるように熱をあげた。ソルの首もとから顔をあげたカイの表情はとろんと蕩けている。そのうえ、可哀想なほど真っ赤になっていた。
ここまで直接的な言葉を告げたのは初めてだ。口説き文句というには非難を浴びそうだけれど。
潤んだ蒼碧がじとっとソルを睨みつける。
「………犬はお前じゃないか」
聞いていないものと思っていたが、昨夜のレオとの会話にばっちり耳を傾けていたらしい。
「違いねぇ」
条件反射を覚えてしまった可哀想な男にソルは珍しく首肯した。
意趣返しでもするように、「お手」とふざけたことを抜かし始めた坊やの戯れに興じて手を重ねる。相変わらずぽやんとした婀娜っぽい顔のままだが、にんまりと意地悪く口角をあげたカイをお手をした手でぐいっと引っ張る。いい子だソル、とでも言いたそうだった可愛くない口を塞ぐように、がぶりと犬の如く噛みついた。