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ホワイトカラーパロ
レオ←クラ
FBI×詐欺師
レオンに奥さん(オリキャラ)がいます。
FBI。自分とは相容れないはずのオフィス内を歩きながら自嘲するように笑った。
綺麗に磨かれたガラスの扉を開けて入れば、自分のデスクに勝手知ったる顔で座る男がこちらを見て眉を顰める。深いブラウンの少し長めの髪を靡かせたその男は若くして部下たちからボスと呼ばれていた。FBIの知能犯専門チームのリーダー、名前はスコール・レオンハート。親しい人間からはレオンと呼ばれていた。整った顔に青空のような透き通った瞳。さらに額の傷が男らしさを演出している。
「遅刻だ、クラウド」
男の耳に馴染む低い声が咎めるようにそう言った。
「いろいろあったんだ」
「朝からか? 何をしていた」
「何って…普通に家を出たんだが途中で座り込んだ女性がいて、体調が悪そうだったから彼女を病院まで運んだ」
「下手な嘘はやめろ」
「嘘じゃない」
にこりと微笑めば、レオンは呆れたような顔をした。
「その嘘くさい笑顔が癪にさわる」
「失礼だな」
「ともかく、おまえが嘘をついていればわかる」
「さすが俺を捕まえた男だ」
「もう一度檻の中に戻りたくないなら、ちゃんと仕事をしろ」
「はいはい。今度はどんな事件なんですか、レオン捜査官」
レオンは持っていたファイルをクラウドに渡し事件の内容を話し始めた。
クラウドは犯罪者である。
幾つもの詐欺行為を行って収監されていたが脱獄した。それからレオンに捕まり取引を持ちかけた。捜査に協力する代わりに刑務所から出られるようにと。
そして知的犯罪捜査のコンサルタントとしてレオンのもとで働くこととなった。この捜査協力と引き換えに自由を得たが、足首にはGPS付きの足輪がつけられている。行動範囲も定められていた。
制限付きの自由。真の自由ではないのにクラウドは今の生活に不満を感じなくなっていた。レオンと共に犯罪捜査を行ううちにクラウドの心境は変化してしまった。
その理由から目を背けるようにして、今日の捜査へと無理矢理に気を向けた。
「レオン、お疲れ」
「ああ、クラウド」
夜のオフィスに戻ってきてレオンのデスクで声をかければ、どこか嬉しげな様子で返事が帰ってきた。
(…嫌な予感)
追っていた犯人は無事に逮捕した。今日はレオンをディナーにでも誘おうか、だなんて柄にもなく思っていたが無理そうだ。
レオンがデスクに置いてある写真立てに目をやる姿を見て、崩れそうになる顔をいつもの表情にどうにか保った。
「どうかしたか?」
レオンはクラウドの様子に敏感だ。目聡く何かを感じたらしいレオンは怪訝そうにクラウドを見た。
「なにがだ?」
「…何か心配事でもあるのなら聞くが」
「別に何もない」
「……変なことは考えるなよ」
「変なことって?」
「いいか、おまえがまた悪さを働けば刑務所に逆戻りだからな」
「わかってる」
レオンが嘘くさいと称した笑顔で返せば深い溜息をつかれる。
「じゃあ俺は帰る。明日は遅刻するなよ」
「……アメリアと約束でも?」
クラウドがそう言えば、レオンは少し驚いたような顔をした。
「なぜわかった?」
「あんた今日の捜査早く終わらせたがってたし、なんか嬉しそうだったからな」
「優秀なコンサルタントで何よりだ」
「ありがと。ディナーの約束?」
「ああ。たまには外で食べようと思ってな。いつも支えてくれる妻をねぎらわないと」
「…いい夫婦だな」
「そうか?」
レオンはどこか恥ずかしげに、でも嬉しそうな顔をした。
その姿に胸にちくりと針を刺さったような痛みを感じる。そこからじわじわと胸の痛みは広がっていった。
「おまえもいいパートナーを見つけるといい」
「……そうだな」
「なぁ、クラウド。俺はおまえを信用したい。今の状況はチャンスだ。詐欺師ではない、クラウド・ストライフに変わるための。いいパートナーを見つければ、おまえも犯罪なんて馬鹿な真似をしようとは思わないはずだ」
「…もう時間がないんじゃないか? アメリアが待ってる」
「……ああ」
レオンはクラウドの肩をぽん、と優しく叩き、「また明日」と去っていった。
レオンの手の感触と温かさを確かめるように触れられた肩に自分で触り、胸を占める痛みから目を逸らした。
*
「クラウド、おっかえりー」
「…ユフィ」
家に帰れば、酒を片手に少し酔った様子のユフィが笑顔でクラウドを迎えた。
「酒を飲むな、未成年」
「法を破りまくってるクラウドに何言われても動じなーい」
「…それもそうか。だが俺の家で勝手に酒を飲のはいけないな」
「いいじゃん! ユフィちゃんはいつもクラウドのためにせっせと動いてるのに」
「はいはい」
「次は何盗む?」
ニヤリと笑ったユフィは後ろからクラウドに抱きついて楽しげに言う。
「今は動かないほうがいい。レオンにばれたらまずい」
「…目覚ましなよ、クラウド」
「ユフィ」
「あたしたちは犯罪者だよ。今までも…これからも」
「………」
「変わることなんてできないよ。いくらクラウドがレオンを、」
「わかってる」
「…あたしは嫌だ、クラウドがあっち側に行っちゃうのは」
ぎゅうっと回された腕に力が込められて、安心させるようにその小さな手に触れた。
酔い潰れたユフィをベッドに寝せてその横に腰掛けた。
(今頃あんたはアメリアと…)
レオンの顔を思い出して自嘲するように笑った。
足首につけられた足枷にそっと触れる。憎いはずの足枷がレオンとの繋がりだと思うと愛おしく思えてしまった。暗く病んだ感情がクラウドをじわりじわりと侵食していく。
相棒として一緒に事件を解決するたびに、よくやったと言ってくれるレオンを思い出しながら目を閉じた。
報われない恋をしている。